Kuma Ichigo (くま一号)
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胸騒ぎの木曜日 (笙子祭II 寄稿版)

 胸騒ぎの木曜日








「『なお、茶話会には黄薔薇のつぼみと紅薔薇のつぼみも参加の予定』だって。きゃーーー。」

 今日何度目の「きゃー」だ、と思いながら……

 わくわくしてるひとりが、いた。



「笙子さん笙子さん、お読みになりまして?」
 さっそくやってきたのはクラスメイトの智奈美さん。

「もちろん。智奈美さん、参加するの?」
「うーん、自分が参加するかどうかは考えちゃうなあ。」
「どうして?」
「紅薔薇のつぼみは、ねえ、ほとんど決まったようなものだし。」
「あら、由乃さまじゃだめなの?」
「だって、ねえ、ついて行くのが大変そうじゃありません?」
「うふふふ。」
「そうよねえ。」

「でも、由乃さまの妹ってわくわくするじゃない。退屈はしないわよきっと。」
「あーあ、笙子さんってこれだから。ふわふわの笙子さんと突っ走りの由乃さまじゃ勝負にならないわよ。」
「勝負って、勝負じゃないでしょうに。」
「じゃあ、参加するの? 笙子さん。」
「うん。一緒に行かない? 智奈美さん。」
「どうしよう。祐巳さまのプティスールになれたらすてきだけどなあ。」

 これはまぎれもなくチャンスだ、と思った。
 薔薇の館へ行けば、きっとなにかきらきらしたものが待っている。

 そして……撮ってもらえる。あの人に。とは、まだはっきり意識はしていない笙子だったのだけれど。

 そして、もう一つどうしても知りたいことがあった。

・・・・・・・・


 あの日。
 バレンタインデーの日、お姉ちゃんは誰にチョコレートを渡すつもりだったんだろう。
 お姉ちゃんとあの日食べた、ラッピングを解いてしまえば普通のチョコレート。

 いいえ。たぶん、わかってる。いえ、高等部に入って、お姉ちゃんの噂を聞くたびにそのことがわかってきた。

 あの時、黄薔薇さまいえ江利子さまは『あなたにもそんな顔ができるのね、安心したわ。』ってそう言った。お姉ちゃんに助け起こされながら、たしかに聞いた。

 『余計なお世話よ』って切り返す口調が、ほんのわずかに優しくて切なくて、わかって、しまった。ちゃらちゃらした人って、あの人のこと。
 三年間、いえもっと前からあの人に見て欲しかったんだ。勉強しても勉強しても追いつけない背中を見続けて、でも、最後にあの人はこちらも見ていたんだってわかった。
 だから……あのチョコレート、渡さなくてもお姉ちゃんは満足したんだ。

 それなら。
 江利子さまに会いたい。
 いえ、会っていまさらどうするんだろう。お姉ちゃんは進学して家を出た。
 でも、知りたい。


 由乃さまと、会いたい。江利子さまのことを聞きたい。
 お姉ちゃんの想い、江利子さまの思いを、知りたい。

 薔薇の館に行けば、なにかが動き出す。

 さあ、まずは応募用紙を取りに。





2005/11/03 公開

あとがき
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聖ワレンティヌスの小さな奇跡のいいわけ
えーと、笙子同盟様解散に伴い、非公開状態になってたのを再録しました。
えーと、がちゃS連載停止中(orz)の聖ワレンティヌスがみてる、の分岐ストーリーみたいに結果的になっちゃったんですが、なぜって、笙子同盟様解散という絶対的〆切があったからでして。

 ほんとは、同盟主、ヒナキさまの主張に従って、「笙子は黄薔薇」まで持って行くつもりだったんだけど、時間切れボツ。 江利子さまと克美さまの因縁を明かすところまででおしまい。
 いろいろと、悔いが残るのねー。でも原作がこの先に進んじゃいそうだから、ここまで、かも。

 冒頭は、がちゃSのNo.1111ですが、そこから先は、投稿用に別物になってます。
聖ワレンティヌスの小さな奇跡 -後- (笙子同盟寄稿版)
聖ワレンティヌスの小さな奇跡
-後編-







act. 3

迎えて、バレンタイン当日。

 瞳子さんは、やたらに気合いが入っている。
「お姉さまは、1年生から3年生、いいえ、中等部から大学部、花寺に至るまでファンが多すぎるのですわ。せっかくの演劇部の衣装ですもの、余人に渡してなるものか、なのですわ」

 真美さんと日出美さんは、毎日の「カウントダウンスペシャル」の発行でよれよれになって、もうどうにでもして、というかんじで存在している。
「あ、笙子ちゃん。もう、写真でも何でも撮ってちょうだい。ついでに司会もやってくれるとたすかるんだけど」
 だめだ、これ。


 今年は、集合場所が薔薇の館前の中庭ではない。なぜか体育館。

 受付の机が並べられ、体育館の出口の一つを囲んで縄が張られている。

 5時。真美さんが立ち上がった。
「それでは、今年のバレンタインデースペシャル企画、ブゥトンとコスでプリクラを開催します!」

 おーやんややんや。しかし、企画の名前になってしまったのか、乃梨子さんのツッコミ。

 ルール説明が日出美さんから行われる。去年とだいたい同じなのだが、一つ付け加えられた。温室の木の根本にはカードは埋められていないので、木の根本を 掘ってはいけない。そこらじゅう掘り返されたら、木が傷んでしまう、というクレームが付いたためである。紅薔薇ターゲットひとつ消去。

 これですよー、とカードを示す今年のブゥトン、祐巳さま、由乃さま、乃梨子さん。
乃梨子さんがどこへカードを隠すかって、これは難問かもしれない。


 ルール説明のあと、例によってあれだ。
「ブゥトンの姉妹の方は、前へ出てきてください」

 去年のことを知っている人は、予想のウチ、だけれど、怪訝な顔をする瞳子さん。
わー、祥子さまも令さまも、志摩子さまもしっかり参加している。
「ブゥトンの姉妹の方には5分間のハンディをつけさせていただきます」
「そんなこと聞いてませんわー」叫ぶ瞳子さん。
それを必死で押さえつける祐巳さま。真っ赤になった瞳子さんがかわいい。


そして。ここからが大変だった。


「それでは、出口以外の扉を閉めてください」
ばたん、ばたん、ばたん。
なんだか閉じこめられたみたいで、不安げな参加者たち。

「それでは、スタートの時に、こちらの受付で生徒手帳のチェックをさせていただきます。生徒手帳をお持ちでない方は、ここでお待ち願います」

 きゃあああっ、という中学生らしい声、うわっという、なんか大学生、のような集団。
 すり抜けて逃亡するのを防ぐために、配置につく、ブゥトンと新聞部写真部スタッフ。「それでは、すたーと!」
真美さまの号令とともに、受付に殺到する参加者。
なにしろ、『祐巳さまとのツーショット』である。これはもう一生もの。
かく言うわたくし内藤笙子、ひそかにねらっております。
蔦子さまによけいなお節介をしてくださったからこそ、いまの笙子があるんだもの、祐巳さまとのツーショット欲しいです。はっきりいって。

 しかし。
「聖さま。なんなんですか、そのカツラは」
「いや、祐巳ちゃんとツーショット写真が撮れるならねえ、だから景さんと一緒に」
「って加藤さん、ななななんで」
「引っ張ってこられたのよ」

「って、なんでこんなところにいるのよ凸」
「デコはないでしょ凸は。せっかくあなたとデートしに来たのに」
「一千万年来るなー」

 こっちはこっちで
「去年、笙子さまが参加していたのにどうしてわたしたちはいけないんですか」
「あのねえ、一年早いでしょ」
いつのまにか『乃梨子さまに青田刈られ隊 一番隊見参』などという幟を持った中学生集団。

そして・・・・・・

 おおおおねえちゃん?
「はーい、笙子」
「うそ」
「なんとなくね。今年も今日が入試なのよ、うちの大学」
「ということは、あの、蓉子さま」
「はーい。あなたが笙子さんね。たしかに、似てないわ」
「よけいなお世話よ」

 つまり、祐巳さまとのツーショットを目指す蓉子さまに誘われて、お姉ちゃんまで来てしまったという……内藤克美さん、あなたはいったいナニをしているんですか。

 そこへ絶妙のタイミングで白薔薇さまが。
「みなさま、薔薇の館にお茶などご用意してございます。ご一緒にいかがですか?」

 ブゥトンズ+志摩子さまに、先代の聖さま、江利子さま、蓉子さままで揃ってお茶会ということで、納得した中等部生たちは、薔薇の館へにぎやかに移動していった。

 さて。
「日出美さんは?」
「あのね、乃梨子さんって一見クールだけど、優しいでしょ。白薔薇さまに向ける視線のちょっとでもこっちに向いてくれないかなーって時々思うんだ」
「つまり白いカード狙いか」
「笙子さんは紅ね」
「うん。競争率高いけど」
「よーし、いくかあ」
「うん」




act. 4

戦いすんで、日が暮れて。

 それぞれのカードは、誰かが見つけて、結果発表は終わったらしい。
笙子はそれを見ないで薔薇の館へ向かった。


 お姉ちゃんが、薔薇の館で山百合会の元幹部たちとお茶会をしている。
在学中にもこんなことはなかったはず。
 ちょっと心配になって、のぞいてみた。

 江利子さまとお姉ちゃんが話している。

「去年のバレンタインの時ね、あなたが気にかけているプティスールのような子なんだろうな、って思ったのよ。まさか実の妹さんだとは思わなかったわ。しかもフライング参加」
「なにをしてるんだと思ったわよ。でもそれがきっかけでねえ、あの武嶋蔦子とねえ」
「ふふふ。カメラちゃんの妹になるのはなかなか大変だと思うわよ」

「ずっと、あなたには追いつけなかったわ。でも、あのとき笙子を助け上げたときにね、『あなたにもそんな顔ができるのね、安心したわ』って言ったでしょ? あなたも私を見ているときがあったんだ、と思って、3年間が無駄じゃなかったって思ったわ」

「とんでもない。あのね、私はいま芸術学部にいるわ。今までみたいに、努力しなくてもそこそこの成績がとれるというのでは、追いつかないの。飛び抜けていかなければゼロと同じ。私ね、努力の仕方って知らないのよ。あなたがうらやましかった」

「私が?」
「そうよ。ほんとにうらやましかったの」

 お姉ちゃんの三年間が無駄じゃなかった、それがわかればそれでいい。

 私も蔦子さまを追いかけて、このまま走ってゆく。


「蔦子さま」
「ほい、笙子ちゃん」
「あのね、お姉ちゃんとツーショット、撮っていただけませんか」
「ああ。いいね。お姉ちゃん、呼んでおいで」




 そして、ここに二枚の写真。
お姉ちゃんと江利子さまのツーショット。
お姉ちゃんと私のツーショット。

 本当なら、リリアン高等部の制服を着ていてはあり得なかったはずの二枚の写真がここにある。バレンタイン企画が作り出した一つの奇跡。

 蔦子さまには、手作りのチョコレートを渡したけれど、ツーショット写真はない。

私は蔦子さまにしかまだ撮ってもらうことができない。
蔦子さまはまだ誰も撮ることができない。

 まだ、先はながいなあ。


2006/02/20 公開
聖ワレンティヌスの小さな奇跡 -前- (笙子同盟寄稿版)



 聖ワレンティヌスの小さな奇跡

-前編-







act.1

 成人式の前後の連休にはセンター試験がある。講義室が使えないし準備もあるので、大学はまだ休み。お姉ちゃんは家に帰ってきてた。

 それにしても、暮れに帰ってこないって電話があった時は、驚いたなあ。

“あ、笙子ねえ、お正月は帰らなくてその次の週に帰るから”
“え? お姉ちゃんどうするの?”
“うん、大学の友達とスキーに行くのよ”
“えええっ?”

『お姉ちゃんが』
『大学の友達と!』
『スキーに行くので!!』
『正月には帰ってこない!!!』
 お姉ちゃん、いえ内藤克美さん、あなたはいったいどうしたんですか。



「はいるわよ」
「うん、お帰りなさい」
「ただいま笙子。なーに、まだ着替えてないの? ああ、それね、すんごいカメラを買ったって。お母さん目を丸くしてたわよ」
「うん、そうだよ」
「あのね、笙子。そんなことしてる間にもライバルは勉強してるのよ。ちゃらちゃらしてたらいい大学へは入れない。だいたいそんなカメラ、使い方覚えるのだ けだって時間がかかるじゃないの。そんなことしてる暇があったら勉強するの。お姉ちゃんはちゃんと志望校に入ったわよ。ライバルがまだ油断してる一年生の 時から勉強すれば有利なんだから」
「だあって」
ぷーっとふくれてみせる。いつものお姉ちゃんだ。いつもの……あれ?

「ぷっふふふふふっ」
「お姉ちゃん?」

「それで? 妹になるのならないの?」
「お、おねえちゃん!?」
「聞いたわよ。武島蔦子の金魚の糞なんでしょ?」
「き、きんぎょのふん~~~!! ひどーい」
うそだあ。お姉ちゃんがどうして。

「で、妹になるのならないの?」
「三奈子さまみたいなこと言わないでっ。誰に聞いたの?」
「ほお、築山三奈子が追っかけてくるくらいの有名人になったか」
とん、と肩に手を置くお姉ちゃん。
「部室が隣だからですっ」
なんか、ずいぶん雰囲気が変わったな。これ、ほんとにお姉ちゃん?

「蓉子に聞いたのよ」
「ようこ、さんってまさか、ロサ……」
「そう。その先代紅薔薇の水野蓉子。一緒にスキーへ行ってね。ふふふ、蓉子は祥子さんや祐巳ちゃんから情報が入ってるからいろいろ聞いたわよ、あることないこと」
「えええええっ。あることないことって、ななな、なにを」

 信じられない。だいたい、蓉子さまだってお姉ちゃんの分類では『浮かれている人たち』の中にはいるんじゃなかったっけ? 山百合会幹部なんて暇人のあつまりで、あこがれるなんてミーハーだけって言ってたのはどこのどなたですか。

「茶話会のこと、とか、金魚の糞のこととかね。デジカメラちゃんってだれのことかしら」
「おおおねえちゃんっっ!」
 真美さまならともかく、お姉ちゃんからこの攻撃は予想もしてなかった。うわあ、なんかまた顔がほてってきた。


「あれ? この写真って」

 あ、写真立て。去年のバレンタインのお姉ちゃんと私の写真。まずい。蔦子さまが言ってた。 
『克美さまがこんな写真見たら激怒するわよ』
ところが。

「なつかしいわ」
眼を細めて優しく笑うお姉ちゃん。写真の中のお姉ちゃんの表情と同じだ。
「蔦子さまが撮ってたの」
「うん、いい写真だわ。さすが蔦子さんね」
「そうでしょ」胸を張る。
「お、もうのろけ? でも、ひとつの奇跡よね。本当なら一緒に高等部にいるはずがないのに制服で一緒に写ってる。まるでスールみたいにね。私にも焼き増ししてくれないかしら」
「もちろん、してくれると思う。頼んどく」
「うん、お願い」


「お姉ちゃん、変わったね」
「笙子も変わったわ。たぶん、この日から変わったのよ。違う?」
「うん、たぶん、そう。でも、お姉ちゃんはバレンタインデー、何があったの?」
「この日の試験で合格したわ」
「うそ、そんなことじゃないでしょ」
「なによ、笙子だって見てたじゃない。わからないなら秘密!」
「お姉ちゃんずるい。」


「蓉子がね。」お姉ちゃんは急に話を変えた。
「この日が人生最良の日だったって言うのよ」
「あ、それ、聞きました。薔薇の館を人でいっぱいにするのが蓉子さまの悲願だったって」
「そう。だから願いがかなったこの日に受験した大学に入っちゃった。第一志望じゃなかったのに」
くすっ、と笑う。
「私もね、最良の日だったのよ」
「そんなの、聞いてない」
「話してないもの」
「やっぱりお姉ちゃんずるい。私のことは全部蓉子さまから聞き出したくせに」
「全部は聞いてないわよ。妹になるのならないの?」
「あーーん、秘密!」

「あはは。勉強『も』しなさいよ」
「はーい」
「じゃあとでね」


 とぼけたふりをしたけれど、本当はだいたいわかってる。
お姉ちゃんも追いついたんだ、あの日。
勉強しても勉強しても追いつけなかったあの人に。

会ってみたいな、と思った。その人に。




act. 2

「笙子ちゃん、あんたたちいったい、なんてことしてくれたのよっ!!」


 写真部の部室に蔦子さまとふたり。今日の成果を見ながら「うーん、祐巳さんはいいっ、今日もいいっ」なんて蔦子さまの横顔を眺めていたら、突然真美さまが飛び込んできた。

 私、なにかした? しかもあんた「たち」。

「真美さま、私、なにかしでかしましたか?」
「まあまあ、座りなさいよ」と、蔦子さま。

「何かしでかしましたかじゃないわっ。とんでもないことしてくれたわよ」

「はあ。」

 しかたないので、インスタントコーヒーを入れる。蔦子さまの黒一色のマグカップ、私はバラのついた白いマグカップ。お客様用は、使い捨てのプラスチック。

「そもそもね、一月の中頃から『今年はなにかやらないんですか?』って特に一年生から聞かれていたわよ。それがだんだん声が大きくなってきて、この前なんか一年生に取り囲まれて、今年も是非ってたいへんだったわよ」
「今年は、ってなんのこと? 真美さん」

「バレンタイン企画に決まってるじゃないのー!」どんがらがっしゃーん。

「は?」 と顔を見合わせる蔦子さまと私。

「で、それがどうしてわたしたち……」
「どうしてもこうしてもあるかーっ」

……はあ。

「今朝、登校してきたら、中等部の子たちに囲まれたのよ。『今年はやらないんですか』って。中等部よ中等部」
……ぎくっ。

「その上さっき、紅薔薇さまに呼び出されたのよ。それで薔薇の館に日出美を連れて行ったら、3薔薇さまが待ちかまえていてね」
「なんか話が大きくなってきたわね」
「中等部の子がね、お姉さん、実のお姉さんよ、とかクラブつながりの先輩から、高等部の子の制服を借りる予約が殺到してるって言うのよ。バレンタインデーに」

 うわ

「最近、由乃さんが中等部の子、有馬菜々ちゃんだっけ、よく呼んでくるでしょう? その菜々ちゃんの話だとね、『乃梨子さまに青田刈られ隊』だとか『秘密結社エミリーのプティスール同盟』とかわけわかんない秘密組織が中等部に暗躍してるらしいのよ」

 あああああ

「それで、紅薔薇さまが『外部の方が、たとえリリアン中等部の者であろうと、高等部の制服で高等部に入り込むのは、安全上も風紀上も好ましくありません』とおっしられまして、『今年は企画はなさいませんの?』にっこり」

 怖い。それは怖いです。

「『生徒会も協力を惜しみませんから、安全上風紀上問題のない企画を立てていただけませんこと? このままでは学内が落ち着きませんことよ』って、さーどーするのよ、この元凶姉妹」

「元凶ってねえ」
「まだ姉妹じゃありません」

「笙子ちゃん、反応するのはそこか。まあそれはともかく。企画よ企画。責任とってなんか考えてよ」
「去年と同じでいいんじゃないの?」
「半日デートはねえ、つぼみの負担が大きいし今回は学外に出る企画はダメって」
「カード探しはあれでいいの?」
「部外者の乱入を防げればね。それも頭が痛いわ」

 ふう、と息をつく真美さまと蔦子さま。
まいったなあ、そんなにすごいことになってるとは思わなかったわ。
 と、目にとまる一枚の写真。

「真美さま、これ、どうでしょう」
「どうでしょうって、学園祭の時に瞳子ちゃんが祐巳さんと衣装のまんまでデートしたときの写真じゃない」
「ですから、紅薔薇のつぼみの妹に協力してもらって、演劇部の衣装でツーショット写真を撮るんです。デートより思い出になるかもしれませんよ」
「ああ、それ。いいかもしれない」


 かくして。ことしのバレンタイン企画も始まってしまったのだった。
「それってコスでプリクラって言いませんか?」という乃梨子さんのツッコミはともかく。



<続く>



2006/02/20 公開


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